筆者は以前、フェラーリ F355を運転する機会がありました。
運転席に座ってすぐに目が留まるのは、今やフェラーリから絶滅した6速MTのシフト。
そのすぐそばに輝いていたのは、フェラーリとピニンファリーナの旗が仲睦まじく交差しているエンブレムでした。
今回は、フェラーリとピニンファリーナの蜜月関係とその崩壊について簡単に書いていきます。
タイガーウッズからシューマッハまで、世界中のVIPから愛されるフェラーリ。
その歴史は75年にも及びます。
そんな「フェラーリの車」の構成要素とは何でしょうか?
「フェラーリが作った車」でも、206や246ディーノは厳密にはフェラーリではありません。
「フェラーリのエンジンを持った車」という定義だと、2001年以降のマセラッティなども当てはまります。
「速いこと」、「F1の魂が込められた車」、いろんな構成要素があるでしょう。
こと、デザインに関しては「ピニンファリーナが作った流麗なボディー」というのが重要な構成要素だったでしょう。
フェラーリといえばピニンファリーナ、といわれるほどその関係は深く、テスタロッサ、F40、エンツォフェラーリなど名だたる名車のデザインがピニンファリーナによるものです。
比較的近年の車ですと、本田圭佑やメッシも愛する、458イタリア。
ジェイソン・ステイサムの愛車、F12ベルリネッタ。
exo.のラインナップですと、シューマッハが開発に携わったカリフォルニア、フェラーリ初の4輪駆動4人乗りのFF。
これら全てピニンファリーナデザイン。
しかし、近年のフェラーリは以前のような女性的なデザインではなく、他のスーパーカーと似たデザインになってきていると感じることもあります。
それはデザインを担当していたピニンファリーナとの関係にヒビが入ったから。
いまやフェラーリのデザインからは90年もの伝統が失われたのです。
その決別を表すかのようにインドのマヒンドラに買収された後、ピニンファリーナはEVハイパーカーの開発を発表しています。
ランボルギーニやマクラーレンとも違う、フェラーリならではの女性的な美しさという重要な構成要素は、すでに失われつつあるのです。
それが今後はもうフェラーリに乗れなくなると書いた理由なのです。