FFは、フェラーリブランド史上類を見ない革新的な車です。
フェラーリの市販車として過去最高の出力を持つ直噴エンジン、4つのシートと約450リットルの荷室。
そして、フェラーリ初の四輪駆動。これまでのフェラーリになかった、斬新なコンセプトを持つ高性能車なのです。
そんなFFのために、フェラーリが新たに作った4WDシステムが「4RM」です。
この記事では、4RMの開発経緯について解説していきます。
「4RM」という言葉の意味は、意外にもシンプルで、そのまま四輪駆動という意味。
四輪駆動はイタリア語で“quattro ruote motrici ”。
quattroは4を表すので、ruote motrici の頭文字を取って“4RM”という名称となっています。
“4RM”がフェラーリブランドから提案されたのは、思いのほか古く、1980年代に遡ります。
1987年6月に、「408/4RM」と呼ばれる未来的なコンセプトカーが発表されたのが4RMの始まりです。
(参考:https://www.ferrari.com/ja-JP/auto/408-4rm)
このコンセプトカーは、革新的な油圧式4WDシステムを搭載していますが、4.0L V8をリアミッドに搭載し、2シータであり、FFとは似ても似つかない車です。
将来的な市販化も視野に開発されていたため、4WDシステムには特許が取得されていますが、1991年にこのプロジェクトは一旦凍結されてしまいます。
当時のフェラーリ副会長ピエロ・フェラーリ曰く、「4WDシステムはそれを搭載することで車重が約200kg増えてしまうため、まだフェラーリの哲学にはそぐわない。
ただし、将来的にはさらに軽量化を図りたい」とのこと。
408/4RMに搭載された4WDシステムは、レスポンスもよくコンパクトで大いに将来性を期待されるものでしたが、大幅な重量増はどうしても避けられなかったのです。
初の4輪駆動のコンセプトカー「408/4RM」が発表されてから25年、フェラーリはあらゆる世代の市販車で軽量化に努め、その技術を磨いてきました。
そして2011年1月に、フェラーリFFを発表したことで、悲願の「軽量化の哲学」に沿った4WDシステム「4RM」を世に知らしめることができたのです。
後編では、FFに搭載されている4RMの性能とテクノロジーについてお伝えします。