FFは、フェラーリブランド史上類を見ない革新的な車です。
フェラーリの市販車として過去最高の出力を持つ直噴エンジン、4つのシートと約450リットルの荷室。
そして、フェラーリ初の四輪駆動。
これまでのフェラーリになかった、斬新なコンセプトを持つ高性能車です。
そんなFFのために、フェラーリが特許を取得し、新たに作った4WDシステムが「4RM」です。
後編では、FFに搭載されている4RMの性能とテクノロジーについてお伝えします。
4RMが性能面で目を見張る点は、以下の3つでしょう。
①軽量
②低重心
③高出力への対応
詳しく解説するために、少し込み入った話になりますが、4RMの構造についてご説明します。
フェラーリ・FFは、フロントエンジンで、後軸側にミッション+デフを搭載する「トランスアクスルレイアウト」を採用。当然ながら、FRがベースの4WD。
前輪には、独立したパワートランスファーユニット(PTU)によってトルクが伝えられます。
このPTUが、4RMの要となる技術です。
PTUは、エンジン前方に置かれ、エンジン内部のクランクシャフトから直接、パワーが供給されるという斬新な仕組み。
どこが斬新かと申しますと、「ギアが無い」点。
後軸側に搭載された7速ミッションを介していないため、「ギア無し」で前輪にパワーが供給されてしまいます。前輪にも、「2段のギア」が搭載されていますが…当然ながら、「2速ミッションの前輪」と「7速ミッションの後輪」とでは、大きな回転差が生じます。
この回転差が許容できるのは、後輪が1〜4速のときのみ。
5〜7速のときは、前輪は駆動されません。
しかも、「オンデマンド式4WD」ですので、通常時は前輪に全く動力が供給されないのです。
つまり、前輪が駆動されるのは「1〜4速ギア」かつ「タイヤが空転したとき」のみ。
皆様が町中でお見かけになったとき、FFは完全にFR(後輪駆動)なのです!
本当に必要なときだけ4WDになる4RM。
他社が真似できない、非常に潔く割り切ったシステムです。
この割り切りによって、驚異的なことに、50%もの軽量化を実現。
660馬力もの高出力にも関わらず、コンパクトで低重心な4WDシステムを実現できたのです。
重量物を後軸に持ってくる「トランスアクスルレイアウト」と小型軽量な「4RM」。
これらによって、前:後=47:53のフロントエンジンとしては驚異的な重量配分を実現し、フェラーリらしい俊敏な身のこなしに仕上がっているのです。
FFのために開発された、4RMですが、現在も進化を続けています。
「4RM-S」、「4RM-S Evo」となり、GTC4ルッソやプロサングエといった最新のフェラーリにも搭載されています。